2012年3月18日日曜日

BBC Archives

Pink Floydのブートを語る上で外せない超定番ブートというのがいくつか有るのですが、今回はその中でも1970年と71年のロンドンにおけるBBCライブを収録した「BBC Archives」というブートをご紹介します。


「BBC Archives」  2CD-R  録音:SBD/A+


Disc 1 (Live At Paris Cinema, London, July 16, 1970)
1, John Peel's Intro
2, Embryo
3, Fat Old Sun
4, Green Is the Colour
5, Careful with That Axe, Eugene
6, If
7, Atom Heart Mother

Disc 2 (Live At Paris Cinema, London, September 30, 1971)
1, Fat Old Sun
2, John Peel Announcement
3, One Of These Days
4, Embryo
5, Echoes
6, Blues


音質は、BBC音源という事で文句なしの超高音質サウンドボード音源。ちょっとリマスタリングをかければ普通に正規盤として売れるレベルの音質です。どちらの公演のセットリストも当時の彼らの代表曲ばかりなので、フロイドのブート初心者の方でも安心して買える選曲ですね。


2つの公演の音についてより細かく述べるとしましょう。
まずDisc 1の1970年の公演は、各楽器はかなりクリアーで、音の分離も良いものの、ほんの少しだけギルモアのギターが他の楽器に比べて小さめに収録されています。十分彼のギターは聴こえるのですが、気持ちもう少し大きめでも良かったかなぁと。逆にロジャーのベースとニックのドラムは少し手前に聴こえます。また、全ての音が重なると、シャリシャリした音が聴こえる箇所もたまにあります。そして「原子心母」の途中にはほんの一瞬だけノイズが入っているところがあります。
とはいえ、ここまで来ると粗探しレベルの細かさです。普通に鑑賞する分には、全く問題のない綺麗な音質なので大丈夫ですよ。

続いてDisc 2の1971年の公演について。
こちらは、Disc 1よりもさらに音の分離が良く、クリアーさでも勝っています。ヘッドホンで聴くと分かりやすいのですが、各楽器の音は、左にギター、中央にドラムとベース、右にキーボードという定位になっています。そのためリック・ライトのキーボードの細かい動きや音量を下げている演奏の箇所までしっかり聴く事が出来ます。ちなみに「Embryo」の1分経つ直前あたりでノイズが有ります。


では、肝心の演奏について。ぱっと聴いた限りだと、いつものライブでの彼らに比べてやや演奏がおとなしい印象を受けました。派手な事はそこまでせずに、堅実に演奏を進めている感じです。しかし、それでもリックのキーボードはかなり頑張ってる印象を受けました。
Disc 2の「One Of These Days」では、曲中最大のポイントであるニックの不気味なシャウトが入っていません。その代わり曲が終わった最後の部分にそれが入っています。この時期のの意図的なライブアレンジかどうかは分かりませんが、個人的にこの部分は正直マイナスポイントです。あの叫び声にたどり着くまでの不気味な感じとその後の開放されたかのような激しい演奏という対照的な2つの曲調がこの曲のミソなので。

とはいえ、このブートの最大の売りはDIsc 1の「原子心母」とDIsc 2の「Echoes」の2曲でしょう。「原子心母」は、スタジオ版と同じオーケストラ&合唱団付きのバージョン。4人の演奏にオケの分厚くも繊細な演奏が加わって、圧巻の出来になっています。まさに壮大(演奏時間25:05)。オケ&合唱団付きのバージョンの「原子心母」は、スタジオ版以外では、費用の関係上20回程度しか披露されていないようです。当然このバージョンでのライブ演奏は、ブートでしか聴けません。この貴重な演奏をBBC音源という超高音質で楽しめる訳ですから、これだけで元が取れるブートですww
さらに71年の方で披露されている「Echoes」は、超クリアな音質のおかげで、曲中での各自の役割が分かりやすいです。特にギルモアとリックがガンガン引っ張っていく演奏はたまりませんな。26分半もある演奏ですが、静と動の対比が素晴らしく、一瞬たりとも聞き逃せません。個人的にこの日の「Echoes」は、71年の数ある演奏の中でも一番好きです。オフィシャルライブDVD「Live At Pompeii」に収録されている同年の「Echoes」よりも好きですね。


というわけでこのライブ音源はあまりにも有名な為、複数のブートレーベルから何回もリリースされてきました。なので入手も簡単です。元が超高音質なので、基本的にはどのメーカーのタイトルでも安心して聴けると思います。オススメです!!!


追記:調べたところ、この音源疑似ステレオだそうです。つまり真にステレオで収録されたわけではないってことですね。しかし、違和感ゼロですし、むしろこっちのほうが聴きやすいかもです。別の盤では、モノラル盤もリリースされているようです。

2012年3月12日月曜日

THE NIGHT TURNS AROUND GOLD

えー、今回もPink Floydネタでございます。これまた定番と言われる良いブートを入手しましたのでww


「THE NIGHT TURNS AROUND GOLD」  2CD-R  録音:AUD/A+


DIsc 1
1, Careful With That Axe, Eugene
2, Fat Old Sun
3, Atom Heart Mother
4, The Embryo

Disc 2
1, Set The Controls For The Heart Of The Sun
2, Cymbaline
3, Blues


まずこのブートの最大の売りは、その驚異的な音質。以前同じ1971年のフロイドの高音質ブートとして、箱根公演のブートをご紹介した事が有りましたが、あれよりもダントツに音質は良いです。一聴しただけでは、オーディエンス録音ではなくサウンドボード音源と言われても分からないほどです。たまに音が少々右にずれたりするのでオーディエンス録音だと分かるのですが、ほとんどは音が綺麗にステレオにセパレートされていて、なおかつ各楽器の音量もバランス良く捉えています。まさに「完璧な音質」と言えますね。

さらに注目すべきポイントとして、この日はバンドの調子がかなり良く、演奏の質が同年の他のライブと比べても高いことが挙げられます。一曲目の「ユージン、斧に気をつけろ」からラストの「Blues」に至るまで、隙のない一体感ある演奏を見せてくれます。目玉曲「Atom Heart Mother」もバンドバージョンで演奏するのに慣れてきたおかげか、いつもよりかなりギルモアのインプロが冴えています。ここまでメンバーの息がぴったりあったライブも正直珍しいんじゃないでしょうか(この日は演奏曲にインスト曲が多いというのもその理由の一つかもしれません)?ww
聴いていて全く飽きない、ワクワクゾクゾクするような演奏が楽しめます。


欠点と言えば、録音テープのチェンジがThe Embryoの頭に行われているようで、「原子心母」からの繋がりが若干不自然になってしまっているという点と、プレスCDではなくCD-Rだ、ということくらいでしょうか。ジャケの印刷もそんなに酷い印刷ではありませんでした。
また、この年はライブで「Echoes」をラストに演奏している事が多いので、もしかしたら「Blues」でライブは終わっていなかったのかもしれません(このブートでは、「Blues」演奏終了後にオーディエンスの歓声が徐々にフェードアウトしながら収録が終わっています)。そこの真相まではちょっと分かりませんが、もしそうならば、素晴らしい音質でぜひともこの日の「Echoes」を聴いてみたいものです!


入手に関しては、あまり見ないので少々難しいかもしれませんが、このブート自体はそれほど高価ではないと思うので、1971年のライブ決定版としてご購入をオススメします!!!Atom Heart Mother
youtubeで発見したこの日の音源を貼っておくので、参考にしてみてください。
http://www.youtube.com/watch?v=BscvdRT3hmI

2012年3月3日土曜日

Boston 1976

えー、つい先日すんごいブートを入手してしまいました。「Boston 1976」というタイトルのブートで、The Whoが1976年3月9日と4月1日に行ったボストン公演の模様を両日収録したものになります。とにかく度肝を抜かれたブートなので、ご紹介しなければと思った次第であります。


「Boston 1976」  プレス2CD  録音:AUD/A+


Disc 1
1, I Can't Explain
2, Substitute
3, Keith Moon Passes Out
4, I Can't Explain
5, Substitute
6, My Wife
7, Baba O'Riley
8, Squeeze Box
9, Behind Blue Eyes
10, Dreaming From The Waist
11, Magic Bus

Disc 2
1, Amazing Journey
2, Sparks
3, Acid Queen
4, Fiddle About
5, Pinball Wizard
6, I'm Free
7, Tommy's Holiday Camp
8, We're Not Gonna Take It/See Me,Feel Me
9, Summertime Blues
10, My Generation/Join Together Blues
11, Won't Get Fooled Again


この公演は上述の通り、2つの公演を収録したブートになりますが、3月9日の方のライブはDisc 1の最初の2曲のみです。どういう事か理由を説明しますと、元々4月1日の方のライブは予定されていなかったのです。実は3月9日のライブで、2曲目の「Substitute」の演奏を終えた時に、ドラムのキース・ムーンがドラッグのオーバー・ドーズで倒れてしまい、ライブが中止になってしまったからなんですね。4月1日のライブはそのお詫びとしての振替ライブに当たります。このブートではその生々しい緊迫した状況をリアルに捉えています。1曲目の「I Can't Explain」は何事もなさそうな演奏なのですが、「Substitute」を演奏し始めた直後にいきなりキースのドラムのテンポがガクッと落ちて、かなりもたった演奏になってしまいます。そのテンポのまま一応曲を演奏し終えるのですが、直後キースが気絶してしまいます。このブートではオーディエンスの話し声も鮮明に捉えており、「ドラマーがいなくなったぞ!」「あいつ気絶してやがる!」「キースが倒れたんだ!」などの会話が聞こえます。会場がブーイングとともにかなり緊迫した状態になっているのが聴いていてすぐ分かります。それから一旦録音が切れて、ボーカルのロジャー・ダルトリーがステージに出てきて状況を説明するところから録音が再開されています。ロジャーは「キースがインフルエンザで倒れた。申し訳ないがこれ以上ライブを続ける事が出来ない。戻ってきて振替公演を行う」(インフルな訳ねーだろw)と説明をし、大ブーイングのオーディエンスに謝罪しています。その後はオーディエンスの混乱したような会話が数分に渡って収録されており、そこで3月9日の方のライブの録音は終了しています。
その結果いかにもキースらしい事情で行われたのがもう一つの4月1日のライブです。こちらは、録音者のテープチェンジの瞬間を除いてはほぼ完全にライブが収録されています。


そして、このボストンでの特別な2つのライブを録音したのはダン・ランピンスキーという人物。彼が様々なアーティストの公演(主にアメリカ東海岸付近の都市でのライブ)を録音していたのは1974年頃〜1978年頃という短い期間なのですが、この人が録音したブートは凄まじく音質が良い事が多く、ブートマニアの中でも彼の録音は非常に重要視されています。その中でもThe Whoのこの2つの公演(特に4月1日の方)は特に音質が良く、ラインのサウンドボード音源と聴き間違えるようなクリアで広がりのあるステレオ録音は、1976年という年代を考慮しても本当に凄まじいです。彼がこの時期に録音したThe Whoの他のライブで有名なものには、1975年のスプリング・フィールド公演と1976年のプロヴィデンス公演が高音質音源として残されていますが、このボストン公演の驚異的な音質は、その両者の音質を軽く一蹴するレベルと言えますね。低音から高音まできっちり録られています。音が潰れてしまったり、遠くなったりするような状況もほとんどありません。


さらにこのライブを特別なものにしているのは、なんといってもバンドの出来。特にキース・ムーン!!汚名挽回と言わんばかりに1曲目の「I Can't Explain」から叩く叩く!ドカドカバカバカとドラムを打ち鳴らす彼のこの日の出来は、同年の彼の他のライブと比べてみてもパーフェクトな出来と言えますね。「Baba O'Riley」などでよくある彼のドラムのもたつきもこの日は皆無で、鋭いフィルインを随所でかましてきます。よく『キース・ムーンは確かに天才的なドラマーだけど、「Who's Next」をリリースした1971年以降、彼のドラムテクは格段に落ちていった」などと言われていますが、この日の彼のプレイはまさに「天才キース・ムーン」にふさわしいものだと断言できますよ!ツーバスを連打しながら彼の周りに無数に並べられたタムを縦横無尽に叩きまくっています。ラスト曲「Won't Get Fooled Again」のラストの彼のドラムソロもいつも以上に激しく叩いているのが分かりますね。
そして、そんなバンドの出来に答えるかのようにオーディエンスも超盛り上がっています。「My Wife」ではオーディエンスの一人が “It's so spectacular!”と叫んでいるのが印象的です。またBaba O'Rileyを演奏し終えるとロジャーが「こんなに大きい歓声は今ツアーで一番だ!」と発言しています。
もちろんギターのピート・タウンゼントとベースのジョン・エントウィッスルのマジキチな演奏も健在。「Magic Bus」や「Sparks」、「My Generation」では、キースのドラムと共に彼らのアドリブ満載の演奏を楽しむ事が出来ます。


ちなみに、4月1日の公演に関しては、ラスト3曲のみダン・ランピンスキーの録音ではありません。この日を別音源で収録したブート「Behind Blind Eyes」の音源を使って補填しています。ダン・ランピンスキーの録音に比べると少し音質が落ちますが、それでも十分に高音質で聴きやすい音源ですね。


そして欠点と言えるかどうか分かりませんが、「My Generation〜Join Together Blues」のメドレーの部分では珍事件が。「My Generation」から「Join Together Blues」に演奏が移ったところでなぜかいきなりピートが激怒。怒鳴って他のメンバーの演奏を止めさせます。キースなどと少しの間口論しているのが聴き取れます(しかしオーディエンスはそんな事おかまいなしに盛り上がってますww)。その後は何事もなかったかのように「Join Together Blues」の演奏を再開。そこのアレンジもいつものメドレーと異なっている点がいくつもあり、非常に興味深いです。



The Whoのライブ・ヒストリー史上重要な記録とその後の名演が、超がつくほどの高音質オーディエンス録音で楽しめ、しかもプレスCDで収録されているとあれば、買うしかありません。本当に完璧なタイトルです。僕自身、このタイトルは自分が持っているoasisなどの他のアーティストのブートや音源を含めても段違いでトップだと考えています。買ってから数日経ったんですが、何回も何回も聴き直してます。文句の付けようがマジでないんですよ。残っている枚数がかなり少なくなってきているようなので、お早めの入手をオススメします。

4月1日の公演は、どこをとっても出来が良いのですが、特におすすめトラックを挙げるとするならば、「My Wife」、「Baba O'Riley」、「Magic Bus」、「Sparks」、「My Generation/Join Together Blues」、「Won't Get Fooled Again」ですかね。この日の主役、キース・ムーンのプレイが存分に味わえますよ。