2011年8月25日木曜日

Days Of Future Passed/The Moody Blues

お久しぶりです。夏も真っ盛りをちょっと過ぎた感じで、日も少しずつ短くなってきたのが分かるこのごろです。

さて、今回は1960年代後半から70年代に活躍した、とあるバンドのアルバムをご紹介します。なぜかというと最近管理人自身がハマっているからですw


バンド名はThe Moody Bluesといいます。ビートルズと同時代にデビューし、後にR&Bバンドからプログレバンドへ転身を遂げたおもしろいバンドです。しかし、もしかしたらプログレというよりは、コンセプトアルバムと呼ぶ方が正しいかもしれませんね。キング・クリムゾンやピンク・フロイドのような「いわゆるプログレサウンド」でゴリゴリ推していくバンドではありませんでしたし。

では、どんなコンセプトアルバムだったのかですが、例えば、「一日の推移」、「ドラッグ体験から得られるもの」、「神の目から見た人間の存在」、「宇宙での自己存在」・・・などなど。これらをそれぞれアルバム一枚で表現するのか!?と驚かされるテーマばかりです。
しかも彼らの場合、単なる実験性が詰まったアルバムで終わらず、きちんとメロディアスな要素を多分に含んでいるところが、僕の好きなところです。


そんな中で今日紹介したい彼らのアルバムは、『Days Of Future Passed』というアルバムです。このアルバムのテーマは、上にも書いた「一日の推移をアルバムを通して表現する」というもので、彼らが初めて取り組んだコンセプトアルバムとなります。
そして、このアルバムの凄い点は、「初めてクラシックオーケストラとロックを本格的に共演させた」ということです。アルバムを通して聴いてみると分かりますが、オーケストラのクラシックとThe Moody Blues自身のロックが溶け合って、まるで壮大な映画を一本見ているような気分になりますw




1. The Day Begins
2. Dawn: Dawn Is A Feeling
3. The Morning: Another Morning
4. Lunch Break: Peak Hour
5. The Afternoon
6. Evening
7. Nights In White Satin


こんなすごいアルバムですが、完成への道のりは決して楽なものではありませんでした。先述したように、彼らは元々R&Bのバンドでした。『Go Now!』という1stアルバムの中の曲が全英1位のヒットを記録したのは良かったものの、後が続かず、なんとボーカル&ギターのデニー・レイン(後にあのポール・マッカートニーのウィングスにて活躍)とベースのクリント・ワーウィックの二人が脱退してしまう危機に。残されたメンバーは、ジャスティン・ヘイワードとジョン・ロッジの二人を新たにメンバーに加え、この危機を乗り切ります。


そして、新たに生まれ変わった彼らは、「一日の流れをアルバムで表現する」ということを思いつきます。このように、アルバムを曲単位ではなく、全体で見るという手法は、The Beatlesの『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』に代表されるように、当時の様々な先進的なバンド達が生み出したものでした。しかしレコード会社は、彼らにかつての『Go Now!』のような路線の曲を歌わせようと、なかなか首を縦に振ってくれません。
しかし、チャンスは意外なところから降ってきます。当時は様々なレーベルが、レコーディングにおけるアーティストの高水準な要求を満たすべく、独自に録音技術を発展・改良していたのですが、DERAMというDECCAの傘下にあるレーベルは、DERAMIC Sound Systemという録音技術を作り上げました。そして、その成果を確認するために、レコーディングに協力してくれるアーティストを捜していたのです。そして、ちょうど当時、DERAMとの契約を獲得したThe Moody Bluesがその対象として選ばれたのです。

DERAMレーベルの要求は、「ロンドン・フェスティバル・オーケストラと共演して、ドヴォルザークの『新世界より』を録音せよ」というものでしたが、バンド側は、この貴重なチャンスを逃すまいと、指揮者のピーター・ナイトを何度も必死に説得します。この努力が報われたのか、『新世界より』ではなく、彼らの「一日の推移をアルバムで表現する」というアイデアが採用されることになったのです。

しかし、ロックとクラシックは相反するものとして認識されるのが普通でしたから、楽団員や商業的利益を求めるレーベルからの反発に遭います。レコーディングもいざ始まったはいいものの、何度も中断されました。当時は、アルバム1枚とシングルヒット1枚しか出していない新米バンドですから、生ずる壁は巨大なものでした。

しかし、幸運なことに、DERAMの親玉であるDECCAが彼らのデモテープに興味を示してくれたことで、なんとか完成させることができ、1967年11月、あのThe Beatlesが『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』をリリースしたのと同年に、『Days Of Future Passed 』が発売されたのです!


アルバムを一聴すると、ロックバンドのアルバムとしてはかなり異質だということがすぐに分かります。1曲目の『The Day Begins』は、オーケストラによる壮大な演奏と、物語の始まりを思わせるナレーションしか収録されていません。続く『Dawn: Dawn Is A Feeling』以降からバンドとオーケストラの共演が始まり、最終曲『Nights In White Satin』(邦題:『サテンの夜』)で、そのドラマティックな盛り上がりは最高潮に達します。この『サテンの夜』は、後にシングルカットされ、全英9位・全米2位をそれぞれ記録した、The Moody Bluesの代表曲です。すばらしい曲なので、ぜひ聴いてみてください。



このような彼らのアイデアや創造性は後のプログレに大きな影響を与え、あのジミー・ペイジに、「真にプログレと言えるのは、Pink FloydとThe Moody Bluesだけ」とさえいわしめました。このアルバムの後も彼らはプログレ史に残る名盤をいくつも残すことになりますが、その話はまた次回ということで・・・www


最後に、イギリスはロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで行われた2000年のライブから『サテンの夜』を。原曲に忠実にオーケストラが入っており、発表から年月はたったものの、すばらしい演奏を見ることができます。必見!↓

http://www.youtube.com/watch?v=JsVnO8s7_e8